HOME > 代表対談 > ×マークエステル・スキャルシャフィキ(3/6)
片山 マークさんは独学で日本語を勉強し、古事記を読破されたそうですね。 日本人でも古事記を完全に理解している人は少ないと思いますが。
マーク氏 私は大学で中国語を専攻していて、漢字を見ればその意味は理解できました。 しかし、奥深い内容を理解するまでにはずいぶんと時間がかかりましたね。
片山 でも、また何故古事記なのですか?
マーク氏 古事記は日本の神話です。 私は子供の時から神話に興味がありました。 誕生日には両親からいつもギリシャ神話や北欧の神話の本をプレゼントしてもらい、時間があればそれを読みふけっていました。
片山 なるほど。 私が子どもの頃は、本屋さんに日本の神話の絵本がたくさん並んでいました。 また祖父や祖母、そして父や母からも神話について話を聞く機会もありましたし、いまよりは神話がずっと身近なものでしたね。 でも、最近は古事記どころか日本の昔話でさえ見かけなくなりました。 これはとてもさみしいことですね。
マーク氏 世界中どの国にも神話があり、その神話はその国のもっとも大切な知恵や価値観を伝えています。 神話がなくなっていくというのは、その国のアイデンティティが消えていくことなのです。
片山 まったく同感です。 私の会社では社員を海外に出張させる機会が多いのですが、 私がいつも社員に言っていることは、へたな英語やフランス語でいい、 しかし自分の国つまり日本の歴史や文化については堂々と語れないといけないということです。
マーク氏 すばらしいお考えですね。 会社の利益や効率を優先させる経営者が多い中で、片山会長のようなリーダーは尊敬に値すると思います。
片山 お褒めいただいてうれしいです。 私は、平和の基本はそれぞれの国がまず自国の歴史を尊重し、深く理解することにあると信じています。 自分の国を知り、愛する心があるからこそ他の国を思いやり敬うことが出来るのではないでしょうか。 そういった意味で、日本人の心の中で希薄になりつつある神話に興味を持っていただいているマークさんにはお礼を言いたい気持ちです。
マーク氏 私は、あの滲みに出会って以来、一生懸命日本のことを勉強しました。 知れば知るほど日本という国は神秘的で、ますます惹かれていきました。 たとえば、エジプトにはピラミッドという遺跡は残っていますが、神々にまつわる話は現代のエジプトには残っていません。 しかし、日本には祭りとか神社にお参りするとか、神道がいまも日常の中に息づいています。 それは私にとってとても刺激的なことで、いまも学びの対象であり創造の源泉となっています。
片山 日本人以上に日本の原点に真摯に向かい合っているマークさんの姿には感銘を覚えますね。
マーク氏 日本人は繊細で美の感覚をすごく持っています。 ヨーロッパとはまったく違う文化で、日本の神秘的な世界にはすごく引き込まれますね。 日本の庭・能・歌舞伎などには神話をルーツとする神秘さがあり、それらを学ぶことにより自分の心が広がり、ますます日本のことが好きになっていきます。